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MBAとは?
 
■MBAとはどんなもの?

●私なりの仮説

  昨今のブームもあり、MBAに興味を持っていらっしゃるかたは多いのではないでしょうか? 私も多くの質問を受けます。私は数年前に、いわゆる米国のトップスクールのMBAを取得しました。その経験や、それから予備校でエッセーカウンセラーをした経験、そしてAlumni Interviwer (ペンシルバニア大学入学面接官)としての経験、友人との情報交換などを元に、現時点での一応の結論をまとめてみました。

●MBA=地図

  私は、MBAとは「地図」のようなものだと思っています。地図を持っていると、自分の居場所がわかります。そして、行きたいところが大体どのようなところかもわかります。そして、駅から近いのか、飛行機で行くべきなのか、交通手段の選択肢もわかります。
  ビジネスに置き換えると、自分の居場所=問題点、行きたいところ=解決策、という感じです。ビジネスにおける問題点・解決策というのは共通しています。私はマーケティングコンサルタントですが、経験上企業が抱えるマーケティング・営業上の問題点は、様々なバリエーションこそあれ、本質的にはほぼ共通しています。ですから、現状を聞けば、大体「あ、今回は商品の問題だ」「マーケティングのコミュニケーションを強化する必要がある」というところまではすぐわかります。MBAできちんとした教育を受けると、そのパターンがわかるわけです。
  しかし、地図は、ではどのようにして行きたいところに行くべきなのかは教えてくれません。それは、自分の今いる位置、行きたいところ、そして予算などによって全く変わってきます。どのような道で行くべきかを考えるのは自分でやらないといけません。MBAも同じことです。MBAで習った解決策がそのままあてはまるケースというのは、あまりありません。それは、企業・競合・顧客・財務状況などによって違ってきます。MBAはそこまでは教えてくれません。ある程度の選択肢まで絞り込むことはMBAで出来ます。それは、大変大きなメリットです。しかし、そこから先は自分で考える必要があります。ですから、MBAとは地図のようなものなのです。


■MBAの価値:MBAはトクか?

●MBAの費用
  米国のトップスクールに行くと、大体学費が今なら年間3万ドル X 2年、生活費が同じくらいですから、千数百万円かかります。さらに、私みたいに会社を辞めて行く場合には、MBAに行かなければ稼げるはずの給料が稼げなくなる、という機会費用が発生します。ですから、金銭的な負担は相当大きいです。

●MBAのリターン
  一部の職種(外資系金融、戦略系コンサルティングファーム)では、MBA(それもトップスクールに限る)がほぼ必須条件に近いものとなっています(新卒は除いて)。もちろん、採用担当者はそんなことは言わず「幅広く門戸を開いてますよ」と言いますが、実態は、トップスクールMBAホルダーで占められています。そのような職業につきたければ、MBAというのは近道になります。
  給料は、もうこれは人によります。外資系金融に行けば確かに給料は上がります。日本の大企業と比べると、数十%〜数倍になります。が、その分もちろんリスクも高まります。
  私は、むしろ精神的なリターンが大きいと思っています。MBAを取得しに留学していなければ、おそらくは「行っておけば良かった」と後悔するでしょう。そして、MBAホルダーに対して抱く必要の無いコンプレックスを抱いたことでしょう。MBAホルダーが全員優秀というわけでは無いですし、MBAを取得してない方でも優秀な方はたくさんいらっしゃるのでそんなコンプレックスを抱く必要は全く無いのですが、それでも変な劣等感を持ってしまったと思います。わからないことはわからない、と言える率直さと自信は得られると思います。
  ただ、トップスクールMBAであれば、履歴書では輝きますから、書類審査で落とされる確率は減るかもしれませんね。
  結論は、「MBAをしっかり活かせる方は高いリターンを得られますし、そうでない方は「MBAをとっても意味がない」」ということになります。

●将来のキャリアとの整合性
  MBAは、どちらかと言うと大企業で出世していくというキャリアを描いている人に向いていると思います。ベンチャーを起こそうなどという方は、MBAが無くても出来ると思います。むしろ、無い方がいいような気もします。私が行ったWharton は、速くに起業センターみたいなものを設置してベンチャーにも力を入れていました。が、起業の授業の先生が最初におっしゃった一言は印象的でした。「本当に起業家精神を持っている人は、きっとここにはいないだろう。MBAを取りにいこうという態度自体が起業家精神とは相反する」と言われたのです。確かに、MBAは学歴志向の人が来るところでもあります。溢れんばかりの起業家魂を持っていれば、MBAもお金も無くても、周りを説得して事を進めて行くでしょう。起業家を目指しているのであれば、MBAよりは、むしろ実際の起業家の近くで働いた方が学べるものは大きいと思います。
  「金持ち父さん、貧乏父さん」のロバート・キヨサキ氏の分類で行けば、MBAは「employee quadrant」(労働者)の中で勝ち抜いて行くためのツールなのです。

●いわゆるトップスクールに行くべきなのか?
  おそらくはそうでしょう。大変なコストと時間を投入することになります。そして、現実として、いわゆる「良い学校」が人事担当者などに評価されます。トップスクール卒業生であれば、転職しようとしたときに、自分のキャリアと関係のある職種であれば、とりあえず履歴書で落とされることは少ないでしょう。
  また、肩書きは一生ついて回ります。「そんな学歴を気にする人とは働きたくない!」という方は、それでもいいと思います。が、現実問題として学歴を気にする方が多いのも事実です。
  どうせお金と時間をかけるのであれば、いわゆるトップスクールに行く方が良いと思います。何を持って「トップスクールというか」は微妙ですが、BusinessWeek, Financial Timesなどのランキングで常にトップ5に入っている学校ですね。思いつくままに上げていくと、Harvard, Wharton, Stanford, MIT, Kellogg, Chicago あたりがトップ5の常連校ですね。
  ただ、それでもトップスクール卒業生というのも結構います(少なくとも千人単位で日本にいるはずです)。私の知り合いで、中国のMBAを取得しに行った方がいらっしゃいますが、それを聞いて私は「なるほど、その手があったか!」と思いました。これから伸びる国、これから日本への影響力が益々大きくなっていくであろう国のMBAを取得することは、大変大きな意味があると思います。さらに、中国語が話せて中国のビジネスがわかり、かつ中国の方に対して「私中国の学校のMBAを持っています」と言えるアドバンテージは非常に大きいと思います。そのような日本人がほとんどいないですからね。

●アメリカ人に対しては絶大な効果
  米国人ビジネスパーソンでは、MBAの意味は相当に大きいようです。私がWharton School のMBAを取得しているとわかった瞬間に結構態度が変わります。私は童顔ですので、アメリカ人からすれば若造に見えるらしいのですが、そういう点では意味がありますね。ただ、反応としては2通りあって、敬意か敵意かのどちらかです。プライドが高いアメリカ人(日本人もそうですが)は、「MBA何するモノぞ」と思っている人も多いので、そ敵意を持たれることも少なくは無いので、相手を見ないといけないですね・・・。

 

■MBAで得られるスキルとは?

MBAで得られるスキルは、ハードスキルとソフトスキルに大別できます。

●ハードスキル
  これは、本からでも得られるものですね。大量の知識を吸収する(させられる?)ことになります。が、それはMBAであろうと無かろうと、本を読めばすむことです。日本にも偉大な経営者はいらっしゃいますので、その方の本だったり講演に行けばいいことです。さらに、このようなスキルは、陳腐化しますので、私が数年前に得た教科書的知識はもうあまり役に立ちません。
 私は中小企業診断士試験にも合格していますが、知識としてはかなり近いです。中小企業診断士の学習を、「体系的に」(これがポイント)行えば、かなりMBAと近い知識レベルに到達できます。

●ソフトスキル
  MBAで重要なのはこちらです。正解のない課題を与えられてそれに対して答えを考えていく能力、そしてそれをクラスメートと議論し説得していく能力、教科書的知識を実践にあてはめていき、応用する能力、などです。これは、なかなか座学や中小企業診断士の学習では身に付きません。
  そして、特に外国のMBAを取る場合には、異文化・異言語の方とコミュニケーションをしっかりとり、説得し、動かしていくスキルは日本にいてはなかなか得られないものです。その意味での視野は確実に広がります。

●MBAを持っている人は優秀なのか?
  では、MBAを持っている人が優秀なのかというと、概してそうでしょう。しかし、それはMBAで得たスキルなのか、もともと優秀な方がMBAに行くから結果としてそうなるのかは結構難しいです。個人的には後者のような感じがします。面接官をしていて思いますが、相当優秀な方でないとWharton School などのトップスクールには合格しません。その方たちは、MBAを取る前から優秀です・・・。逆に言えば、MBAを持って無くても優秀な方はたくさんいらっしゃるということでもあります。


■MBAはどんな人材を求めているのか?

●現状に不満があるなら、行くな。解決してから行こう!

   ちょっと厳しい言葉になってしまいますが、今現状に問題があって、それを解決するためにMBAを取得しよう、という態度では行かない方が良いと思います。典型的なのは、「今の会社では出来ない」「今の上司では・・・」というネガティブな要因でMBAを目指すのであれば、恐らく何も変わらないと思います。MBAを取って帰ってきても、同じことが繰り返し起こるでしょう。MBAを取って伸びる人というのは、「今の上司が・・・」ではなくて、「この上司を変えてやろう!」「今は出来ないが、こうすれば出来る!」というような態度で変革を起こして来た人です。学校もそういう人材を求めています。逆にそういう方であれば、MBAに行かなくても、ご自分で勉強できるかな、とも思います・・・。

●究極的に言えば、MBAを持っていてもダメな人はダメだし、持っていなくてもスゴイ人はスゴイ

  MBAに行ったから出来る、というよりは、出来る人がMBAに行くという気がします。逆に言えば、トップスクールに行ける人というのは、MBAに行かなくても自分で変革を起こせる優秀な方、ということにもなりますね・・・。そうなると、MBAに効果がある、というよりは、もともとその方が持っている資質というか努力の方が大きいのかな、という感じがします。さらに逆に言えば、トップスクールMBAというのは、MBA自体よりも、そのような人材だという証明書の価値が大きいのかもしれません・・・。ありきたりな結論ですが、出来る人はMBAを持っていようといなかろうと出来る人ですし、出来ない人はMBAを持っていようといなかろうと出来ない、ということだと思いますね・・・。


■「MBAは役に立たない!」に異論を唱える

「よく、MBAは役に立たない」という人がいます。聞く度に、イヤな気分になるので反論します。相当毒舌なので、見ないことをお薦めします。頭に来ない人だけ見て下さい(笑)。

●本人がMBAで無い場合

  悪口を言うなら客観的に言いましょう。もちろん、MBAでも出来る人とそうでない人がいます。MBAホルダーで出来ない人を例にあげて、「MBAホルダーでも出来ないヤツがいる」というのなら、多分本当でしょう。しかし、それを持って「MBAは役に立たない」というのが誤りというのはもちろんです。Fallacy of Hasty Generalization(一般化の誤謬)というやつで、MBAで出来る人が一人でもいれば、その議論は崩れます。それでもそう言うのなら、それは単に非論理的な悪口ですね。

●本人がMBAの場合

1)MBAが役に立っていると思っているのに「役に立たない」という場合

1-A) 売り文句の場合

  売り文句、宣伝文句として「MBAは役に立たない」という人を見かけます。これは、そういうことにメリットがあるから言うわけです。なぜかと言うと、そんな役に立たないことを1年も2年もやっていた、ということは、役に立たないと知っていても辞める勇気が無いか、取るまで気づかなかったか、どちらにしても自分にとってあまり良いことではありませんから。
  この宣伝文句のメリットは、
  1)さりげなく自分がMBAだと言える(この時点でMBAを宣伝文句として使っている矛盾があり、既にこの議論は破たんしている)
  2)俺はMBA以上のことを知っているんだと間接的に自慢できる(他のMBAと差別化していると聞こえるが、その証拠は無い)
  ということです。

1-B) 謙遜の場合

  これが唯一まっとうな使い方として、「MBAが役に立たない」というときでしょう。MBAを自慢すると敵を作ります。MBAに対するコンプレックスがありそうな人に対しては、「MBAなんて役に立ちませんよ。あなた様の方がよっぽどすごく存じます。へへえ」と言っておいたほうが良いときがあるのです。ただ、逆に言えば、これもMBAの傲慢さの裏返しでもあるので、私はあまり使いませんが。

2)MBAが役に立っていないと本当に思っている場合

2-A) 天才くん
  既にMBA程度のことを知っていたので、行ったのに全く意味が無い場合ですね。しかし、これでは単なる間抜けです。本当の天才なら、MBAが役に立っていないことを知っていればMBAを取りになんか行かないでしょうから、本当は天才くんでは無かったことになりますね。

2-B) 鈍才くん
  宝の持ち腐れってヤツですね。ネコに小判でもイイですが。MBAが役に立たない、というのであれば、どうぞ勘と直感だけで経営でも仕事でもやってみてください。それで出来るようであればそれはそれでいいかもしれませんが、それにMBAが加われば鬼に金棒なのに・・・。大体MBAを使いこなせない人に限ってこういうことを言うもんです。っていうか、よくMBAに受かりましたね・・・。

大体、「MBAが役に立たない」って言う人の決まり文句が、「机上の空論は現場では役に立たない」って言う訳ですね。あんたは「何の現場を知ってるんだ!」と言いたくなりますが、それ以前に、MBAの知識は、良くも悪くも後追いの知識なんです。ということは、新しい知識は無いかもしれませんが、検証されて、成功してきた知識なんですね。それが古すぎて役に立たない、というのならまだ一理ありますが、それでも、そんなに最先端の現場にいたとしても、その学科を学ばなければいいだけで、別の知識を持ってくればいいのに・・・。と珍しく熱く語ってしまいました・・・。

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